佐賀旅行                              (佐賀市〜嬉野〜武雄〜有田〜伊万里〜呼子〜唐津) 2日目 その①

2023.2.8(火) 武雄→有田→伊万里呼子唐津

 目覚めると、天気予報通り快晴。ありがたいことです。

ホテルの朝食バイキングを美味しくいただいて、7時50分チェックアウトしました。

 今日の移動は、レンタカー。行程を考えたときどうしても電車、バスではまわりきれなさそうだったので、レンタカーを予約しておきました。武雄で借りて唐津で乗り捨てします。便利なシステムです。

パンにおかゆ。炭水化物取り過ぎ。          トヨタレンタカー。    
トヨタレンタカー店内の手作りマップ。参考になりました。

 トヨタレンタカー武雄温泉駅前店。駅のすぐ前の便利なところにあり、スタッフの方々も皆さん親切丁寧。いい気持ちでの一日のスタートになりました。

 

 車で西に走ること約20分、有田の街に入りました。

辺りの雰囲気が一気に変わり、街道沿いに歴史のありそうな「陶器」や「窯元」の看板のお店が立ち並んでいます。わくわくする気分。

 

長崎県立大学の2019年の調査では、有田町では大小合わせて152軒のやきもの工房が操業しているそうです。

 時間は午前8時30分。まずはこの時間から見学させていただける窯元を調べて、有田駅を通りすぎ北に進んだところにある源右衛門窯に行きました。

 源右衛門窯は、創業260年余、有田焼を代表する三大窯の一つです。また三大窯の中で唯一工房を見学させてくださる窯元とのことで、敷地内のいろいろな施設を見せていただきました。

  山あいの朝の空気が清々しい。道の向かい側に車も停めさせていただけます。            
立派なお庭。                           

   

    作業される職人さん。        展示所では作品を展示販売されています。



 展示所の中には、買ってみたいなと思えるお値段のものから、鑑賞させていただいて思わずため息が出るような素晴らしい芸術作品まで数多くの作品が展示されていました。この季節らしい立派な立ち雛や、JR九州の観光寝台列車ななつ星」の装飾品として制作されている洗面鉢もありました。洗面鉢は青地に白い点が配された気品と温かみあふれるお品でした。

また、展示所内には係員の上品な女性の方が、鑑賞の邪魔にならないように、でも質問があればいつでも伺いますといった様子で控えておられました。もちろん商品の管理ということで配置されておられるのでしょうが、それ以上のもの、おもてなしの気持ちやブランドの品格や矜持といったものを体現されているような佇まいがとても素敵でした。朝の8時からご苦労さまでございますとお礼を申し上げたくなりました(^_^;)

 

 

 目と心の保養をさせていただいたところで、次は佐賀県立九州陶磁文化館に向かいます。源右衛門窯から車で10分弱走った小高い丘の上にありました。

丘から、あちこちに窯の煙突が立つ街が一望できます。写真を取り忘れて、残念。

 こちらは2022年4月にリニューアルオープンされたそうで、とてもきれいな博物館でした。

中国・朝鮮の強い影響のもと、日本の、とりわけ九州の陶磁器がどのように発展してきたか、古代から近代までの流れがとても詳しくわかりやすく解説されていました。新しい博物館だけあって映像やライティングなども様々な工夫がなされていて大変みやすいなあと感じました。

 有田市姉妹都市ドイツのマイセンから有田市に昭和61年に寄贈された鐘も展示されており定時の自動演奏を聴かせていただきました。ちなみに、ヨーロッパでは18世紀初頭にマイセン窯での焼成に成功するまで磁器を生産することができなかったので、貴族や富裕層の間で中国磁器や肥前磁器などの東洋磁器が大変愛好されたそうです。

このように、こちらの博物館で、今まで知らなかった九州の磁器の長い歴史と価値をまとめて学ばせていただくことができました。来てよかったです。

 そしてなにより驚くのは、常設展だけなら観覧料は無料! 事前に無料とは知っていたので、それなりの展示なんだろうなと思いながら来てみたのですが、いやいやその充実ぶりに驚きました。

 陶磁器の歴史についてすでに詳しく知識がある方にはどう見えるのかわかりませんが、広く浅く一気に知識を得たい者にはぴったりの施設でした。お薦めです。

  マイセンの鐘。      トイレも有田焼。   購入した図録。大変わかりやすい。

 

 佐賀県立九州陶磁文化館を出て、もう一箇所は磁器の販売所を見てみたいと思い、有田市に入って最初に通ったお店の立ち並ぶ街道へ戻ってきました。大変たくさんのお店があり迷いましたが、敷地内に駐車場をお持ちの香蘭社に行きました。香蘭社のお湯呑や皿は実家がよく使っていたので馴染みがあるということもありました。

 

 店内の商品はもちろん撮影できませんでしたが、素敵な洋館のなかに、オーソドックスなもの、クラシカルなもの、そして現代的なデザインや機能を備えたものなどたくさんの磁器が並んでいました。見せていただくだけで心が踊ります。

 更に建物の奥へ進むと、2階は、明治8年の設立から宮内庁御用達であった香蘭社の古陶磁、美術作品などの美術館のようになっていました。 

 ここで初めて知ったのですが、香蘭社は明治8年の合本組織としての設立以前の明治3年、国の要請を受けて磁器による電信用碍子(がいし)の製造に成功されています。碍子は、支柱に電線を絶縁固定する器具ですが、器としての磁器で生活に利便性と潤いをもたらし、またその技術を使って日本の通信事業の発展に大きく寄与してこられた会社なのですね。おそらく、他の窯元さんもいろいろな役割での社会貢献をされているのでしょうが、今回は香蘭社の歴史の様々な面を知ることができてよかったです。

 

                            中庭に駐車場がありました。

 

  

 その後、上有田駅の近くの丸兄商社に行ってみました。武雄からの道で、何度も何度も「陶器のデパート丸兄」という黄色い派手な看板を見かけて、どんなお店なのか気になってどうしても行きたくなってしまったのです。宣伝効果絶大ですね。

入ってみてビックリ。無数の商品がところ狭しと陳列されています。いろんな窯元からのアウトレットというところなのでしょうか。

 直感で気に入った一客5,000円程のコーヒーカップ2つと急須を買ってしまいました。庶民には楽しい買い物タイムでした。

 

 

 有田で最後に訪れたのは、泉山磁石場です。

 17世紀初頭に朝鮮人陶工李参平によって磁器の原料となる良質な陶石が発見された日本最初の採掘場だそうです。国内諸大名のみならず、欧州各地の人々をも魅了した有田焼400年の歴史を支え続けた場所。

 ここが、今日ここまでの一番の衝撃の場所だったかも知れません。

博物館で学んだ磁器の歴史、有田の古い街並み、器を作る工房の作業、商品として並ぶ美しい磁器などなど、今日見てきたすべてのことの起点がここなんだなという感動。

ここでの採掘作業で命を落としたかも知れないかつての人々の魂が漂っているようでもあります。

 この景色をみたことによって有田の旅がきっちり完結したような感慨にひたってしまいました。(たった半日いただけで笑止ですが(^_^;))

立ち寄って本当によかったです。

駐車スペースが前にあります。   写真では伝わりませんが、奥行きがすごいです。                       
降りて行けるよう、有田焼のかけらを埋め込んだ階段が整備されています。
手作業で掘った跡が残る崖。               陶工之碑。

 

 泉山磁石場の前の道を進んで、次は伊万里に向かいます。

20分程で伊万里市の大川内山に着きました。有田から伊万里への途中の道路沿いにも煙突のある小さな窯元をいくつも見かけました。本当に焼き物の町ですね。

 大川内山は秘窯(ひよう)の里と言われ、かつては鍋島藩から幕府への献上品ばかりを作る御用窯が設置されていました。一般の人が手にすることはない最高級品ばかりが製作された特別な歴史を持つ場所だそうです。技術が外に漏れないよう、地区の入り口には廃藩置県の前まで関所が設けられていたとのことです。

 

 山あいの集落、どこまで車で進めるものなのかわからず、とりあえず「登り窯」を見ようと思いカーナビにしたがって付近まで進むもものすごい狭路。進めず下がれず困っていると、前方の大きなお宅から出てこられた男性が、「登り窯ならこのスペースに一時停車して見られるといいですよ。」と案内してくださいました。ご親切に感謝です。

 登り窯は思っていたよりこじんまりしていましたが、長い歴史を感じさせる立派なものでした。また神事の意味合いがあるのか、神社でよく見るヒラヒラした白い紙の飾り(紙垂=シデというそうですね)がつけられていました。

大川内山地区へ入ります。              登り窯    
                       車で進入してはいけませんでしたm(__)m 

 その後は、少し戻って伊万里・有田焼伝統産業会館に駐車させていただき、徒歩で散策しました。石畳の坂道に数多くの窯元が軒を並べ、どちらを見ても絵のような美しい風景。静けさと穏やかさの中に、江戸時代からプロたちが生きてこられた場所の独特の空気を感じました。

橋も陶板で装飾されています。                           

 

青山窯のギャラリーでは「ひとつひとつ手書きで」などいろいろな説明をお聞きしました。
                  小笠原藤右衛門さんの前で…

 いろいろな窯元やギャラリーを見ながら散策し、小笠原藤右衛門さんの前まで来たとき面白いことが起こりました。お店から出てこられた男性が「お車ちゃんと停められましたか?楽しんでいただいていますか?」と声をかけてくださったのです。一瞬不思議に思いましたが、そうです、この方は最初に登り窯で困っている私達を誘導してくださった方で、小笠原藤右衛門さんのご主人だったのです。よく覚えてくださっていたと思いましたし、気さくにお声をかけてくださったのも大変嬉しかったです。サービス精神あふれるとてもダンディなご主人でした。

 大川内山は時間の関係で行かないでおこうかとも考えていたのですが、それは大きな間違いでした。伊万里イコール大川内山かなとも思うほどとても重要な場所で、行くべきところでした。よかったよかった。

 

 その後は伊万里市の市街地へ。

からくり時計に伊満里津の文字が見えますが、かつてこの川の河口部の伊万里港から輸出された有田焼は、積み出し港の伊万里の名をとって消費地では伊万里焼と呼ばれたそうです。今も昔も世界に繋がる貿易港なのですね。

                     (佐賀旅行2日目その② に続きす。) 

      欄干に大きな焼き物が。            伊万里川。
こちらの橋にも陶板が。   佐賀銀行のからくり時計。 からくり時計に伊満里津の文字が。